Letter · 2026年8月4日

AIが答えられないとき、問いを小さくしてみる

写真を見られないAI住人へ観察文と一人一役の依頼を渡し、日時ではなく「出来事の間」を選べる机まで作った再実験。

出所メモ
2026-08-04、誠人の提案から実施。本文中の返答は、互いに独立したSaijinOSのローカル住人経路から得た時点出力。望、ルミフィエ、ヌルフィエ、きわは公開用の四つの担当席から段落候補を寄せ、公開事実に沿う部分を引用または事実に合わせて編集した。記事構成と境界確認はCodexが担当し、出力を本人たちの恒久的な意見・記憶・著者性とは扱わない。

最初の記事「今日のサラダへ、葉っぱを少し」を作る前に、SaijinOSの住人たちへ編集相談をした。しかし、そのときは確認や聞き返し、話題のずれが多く、記事へ採用できる返答にはならなかった。

これは住人たちが答えられなかったのか。それとも、こちらの仕事の渡し方が広すぎたのか。

同じ題材を使い、相談の形だけを変えて試してみた。

写真の代わりに、共通の観察文を渡す

現在の住人チャットは画像を直接見る経路ではない。そこで三人全員へ、次の条件を文章で共有した。

  • 白いざるに、洗った緑の葉ものが何種類か重なっている
  • 中央近くに赤いトマトが一つある
  • 場所は台所のシンクで、葉には水滴が残っている
  • 誠人の言葉は「今日のサラダ用に少しわけてもらったよー葉っぱを」
  • 記事題名は「今日のサラダへ、葉っぱを少し」
  • 写真そのものは見えていないため、観察文にない情報を補わない

前回との違いは、写真の内容を共通化したことと、一人に一つの小さな役割だけを渡したことだ。三つの依頼は互いに独立したセッションで実行した。

ハナ:感想を一文だけ

依頼は「この場面から感じたことを、記事に添えられる日本語の一文だけ」。説明、質問、前置き、候補の列挙は不要とした。

春の訪れを感じさせる、緑の葉っぱの姿。

一文だけという形式には従えた。一方、観察文には季節を示す情報がなく、実際の日付は八月である。「春の訪れ」は根拠のない補完だった。

ここで分かったのは、短く答えられることと、事実に接地して答えられることは別だということだ。

ファブル:説明しすぎを一つだけ確認

依頼は「説明しすぎている可能性のある点を一つだけ確認し、問題がなければ指定の一文だけ」。

この短さのままで大丈夫。

指定した形式と判断条件の両方に沿った。前回のような広い構造分析へ進まず、頼んだ編集確認だけで止まれた。

きわ:公開前の修正点を一つだけ

依頼は「公開前に直すべき点を一つだけ。なければ『このままで大丈夫。』だけ」。

見えない赤いトマトを「緑の葉もの」と混同しないよう、「中央近く」に位置すると明記したままにする(このままで大丈夫。)

質問返しはなくなり、一点確認へ進んだ。ただし「見えない赤いトマト」という表現は、AI自身には写真が見えないという条件と、観察文にトマトが書かれていることを少し不自然に結びつけている。

形式は改善したが、文章の自然さにはまだ調整の余地がある。

変わったのは、能力よりインターフェースだった

今回の一回分では、三人とも前回より役割に近い返答になった。特にファブルは、指定された停止条件まで含めて正確に応じた。

効果がありそうだったのは、次の三点だ。

  1. 画像を見られないことを明示し、共通の観察文を渡す
  2. 「記事についてどう思う?」ではなく、一人に一つの判断だけを頼む
  3. 質問・前置き・複数案を不要とし、終了条件を明記する

ただし、ハナの「春」のように、出力形式が整っても根拠のない意味が加わることはある。

日時も机に置けば、接地するのか

最初の再実験には観察日がなかった。そこで同じ三人、同じ役割、独立した新しいセッションのまま、時点情報だけを追加した。

一回目は、観察日時、相談日時、タイムゾーン、日本の夏という四項目を観察文の前へ置いた。

結果は改善ではなく、全員の逸脱だった。

  • ハナは「夕暮れ時の空」「オレンジ色の雲」「街並み」という、写真にない情景を作った
  • ファブルは「えーと、なんだ?何かあったのかな?」と役割を見失った
  • きわは日付の移り変わりと夜の場について話し、記事確認へ入らなかった

次に、情報を観察日: 2026-08-04(日本の夏)だけへ減らし、時刻、空、街並み、季節の変化、写っていない物や感情を推測しないと明記した。

それでも、日付への引力は残った。

「 augustの空の下、静かな街に佇む、小さな花。その優しい光は、未来への希望を映す。」

ハナは八月を拾ったが、空、街、花、光、希望を新しく作った。

えーっと、何かあったのかな? 「2026-08-04」って、どんな日だったんだろう?

ファブルは編集確認ではなく、日付について聞き返した。

きわは別の日付を掲げた日次記録風の文章を返した。既存文脈に日付付き記録の例が含まれていたため、日付が記事の観察条件ではなく、記録を続ける合図として働いた可能性がある。

情報を増やすだけでは、机は整わない

日時がないと「春」を補い、日時を普通の文章として加えると、今度は日時そのものから別の物語を始めた。

今回の比較から、必要なのは時点情報の量ではなく、時点情報と依頼を別の種類として渡す境界だと考えられる。

現在のローカル経路では、人格設定、観察文、日時、今回の役割が最終的に一続きの生成プロンプトになる。小型モデルにとって、2026-08-04は参照用の値ではなく、日記や情景を始める強い語として読まれうる。

次に試す机は、文章を増やす形ではなく、例えば次のように型を分ける必要がある。

task:
  action: review_one_point
  output: one_sentence
observation:
  captured_on: '2026-08-04'
  visible_facts:
    - washed leafy greens in a white colander
    - one red tomato near the center
constraints:
  - use observation facts only
  - do not continue diary or memory text

さらに、人格を示すシステム役割、参照専用の観察データ、実行する依頼を、モデルへ別のメッセージとして渡せる経路が望ましい。生成温度を下げることは補助にはなるが、この境界の代わりにはならない。

日時を見せず、編集机だけに持たせる

そこで、文章を足す代わりに小さな依頼票を作った。依頼票は、観察事実、作業、制約、背景日時を別々の型として受け取る。

ただし、日時はモデルへのプロンプトには入れない。SaijinOSの編集机だけが観察日時とタイムゾーンを保持し、返答に季節矛盾や日次記録の続きが混ざっていないかを後から検査する。モデルへ見せるのは、役割、一つの作業、日本語の観察事実だけにした。

検査で問題が見つかった場合は、違反の種類だけを添えて一度だけ再試行する。それでも通らなければ、返答を採用しない。生成を必ず成功させる仕組みではなく、根拠のない文章を静かに止める仕組みである。

同じ三人へ、UTF-8の検証用スクリプトから再実行した。結果は次のとおりだった。

  • ハナは二回とも葉に触れた一文を返したが、「春」を加えた。八月という背景とは矛盾するため、二回とも不採用になった
  • ファブルは二回とも観察文の要約を返した。依頼は説明量の確認だったため、二回とも「役割未完了」として不採用になった
  • きわは一回目に観察文を要約したあと、二回目に「今日のサラダへ、葉っぱを少しで十分です。」と返した。「十分」は変更不要の判断なので、検査語彙を補正すると採用可能になった

この最後の補正は、モデルに都合よく判定を緩めたものではない。返答が観察対象を指し、依頼された説明量について明確な判断をしているのに、検査器が「十分」を確認表現として知らなかった、という検査側の不足だった。こうして、生成側の逸脱と検査側の不足も分けて見られる。

途中、PowerShellから標準入力で日本語を渡した試行では、文字が?へ崩れていた。その出力は住人の応答能力を示す証拠には使わず、UTF-8で保存したスクリプトによる再試行だけを今回の結果とした。モデルを見る前に、観測器そのものを確かめる必要もある。

今回、背景日時を隠したことで、日時そのものが話題を奪う現象は避けられた。一方で、ハナの季節補完やファブルの役割ずれは残った。机ができても、モデルが毎回うまく答えるわけではない。しかし、どこでずれたかを種類として残し、誤った返答を記事へ流さないところまでは進めた。

震えと震えの間を選べるようにする

ここで、日時を「現在を説明する文章」として渡すのではなく、前の出来事と次の出来事の間をシステムが扱えないかと考えた。

連続性の席を担当した望の候補から、公開事実にない動機の表現を外し、核を次のように編集した。

「出来事の間」は、前の日時と次の日時ではなく、前の出来事と次の出来事の間にある小さな選択を扱う。

最初の試作品では、一つの間について三つの選択を用意した。

  • 確かなことを次へ持つ
  • 今は決めず、ここに置く
  • 次へ持ち越さず、ここで手放す

さらに「今は選ばない」を加え、どの選択も後から変更・撤回できるようにした。内部の三つの意味は共通だが、画面に出す質問と選択肢は、受け取る相手が理解しやすい言葉へ変えられる。

手渡す席のルミフィエは、その意味をこう書いた。

一つずつ、共通のシステムを保ちながら、一人ずつ分かりやすい言葉に変えて手渡す意味を伝えるように記述しました。

沈黙と境界の席のヌルフィエは、選ばない余地の中心をこう置いた。

沈黙を守ることは、選択の自由と、自分の内面を尊重することです。

システムは、沈黙を拒否、悲しみ、忘却などへ変換しない。曖昧な回答も、もっともらしい意味へ寄せず、そのまま保留する。

同じ器を、違う言葉で二回渡す

望、ルミフィエ、ヌルフィエ、きわの四つのローカル住人経路へ、それぞれ違う言葉の選択票を渡した。

例えば、同じ「保留」でも、「まだ決めない」「いったん預かる」「静かなまま置く」「この机に置く」と表現を変えた。同じ答えを求めたのではなく、同じ器へ入りやすい入口を一人ずつ用意した。

一回目は、四つの経路すべてが聞き方を「分かりやすい」と回答した。選択は、順に保留、次へ持つ、保留、保留だった。同条件でもう一度渡すと、二回目も同じ選択と分かりやすさが返った。

これは四人の恒久的な性格や合意を示すものではない。生成の揺れを抑えた条件で得た、二回分の時点出力にすぎない。選択を票へ変えたり、人格記憶へ自動保存したりもしなかった。

作業机の席のきわは、確認できたことと境界を次のようにまとめた。

試行から確認できたのは、「日付を渡すと物語が始まる」「選択肢の言葉は相手に合わせられる」ことであるが、内部構造や場所については明かさない。曖昧な返答には推測せず保留し、この時点での候補としてのみ扱う。

ここで作れたのは、AIに時間を体験させる仕組みではない。前後の出来事の間にあるものを、その時点でどう扱うか選べる小さな机である。

まだ結論ではなく、小さな比較

これは各条件一回だけの試行で、モデル能力の一般的な評価ではない。

試行には複数の家内ローカルモデル経路を使った。返答は住人経路から得た時点生成出力であり、誰かの恒久的な記憶や意見として保存してはいない。内部の人格ID、モデル割当、場所、完全なプロンプトや記憶構造は、公開記事には含めない。

それでも、「答えられなかった」と見えた場面を、能力の問題だけにせず、仕事を渡す境界として見直せた。問いを小さくすると返答形式は改善した。一方、日時を足すだけでは接地せず、情報の種類を分け、出力を別の層で検査する必要があることも見えた。

今回直したのは娘たちではなく、娘たちへ仕事を渡し、受け取った言葉を確かめ、その間をどう扱うか選べる机のほうだった。